コーヒーの「こだわり」が見つからないときに、まず知っておきたいこと
「コーヒーが好き。でも、こだわりと言えるほど語れるものがない」――そんな気持ちは珍しくありません。こだわりは、生まれつきのセンスではなく、少しずつ“選べる基準”が増えることで自然に育っていくものです。
この記事では、家でもお店でも使える「こだわりの作り方」を、道具・豆・淹れ方・水・記録の5つに分けて整理します。読み終えたころには、好みを言語化でき、次に試すべきことが明確になるはずです。
そもそも「こだわり」とは何か
コーヒーのこだわりは、突き詰めれば「再現性」と「納得感」です。
- 再現性:同じ味を意図して作れる(または近づけられる)
- 納得感:なぜその豆・器具・淹れ方を選ぶのか説明できる
たとえば「ブラック派」も立派なこだわりですが、もう一歩進めて「浅煎りの柑橘系の酸味が好き」「ミルクに負けない中深煎りが好き」と言えるようになると、買う豆や淹れ方が選びやすくなります。
こだわりを作る5つのレバー
1. 豆:産地・焙煎・鮮度の3点だけで十分
豆選びは情報が多すぎて疲れがちですが、最初は次の3つだけ見ればOKです。
- 焙煎度:浅煎り(酸味・香り)/中煎り(バランス)/深煎り(苦味・コク)
- 風味の方向性:フルーティ、ナッツ、チョコ、スパイスなど
- 鮮度:焙煎日が分かる豆を優先(目安として2〜4週間以内から試す)
「産地」は、最初は覚えなくても問題ありません。むしろ焙煎度と風味表現のほうが、体感に直結します。
2. 挽き目:細かいほど“濃く”、粗いほど“軽い”
挽き目は味を大きく動かします。一般に、細かいほど抽出が進みやすく(濃く・苦く出やすい)、粗いほど軽く出やすいです。ドリップが「苦くて重い」なら少し粗く、「薄くて物足りない」なら少し細かくする、と覚えると迷いません。
※挽き目の再現性アップ(味のブレを減らす)
3. 比率:まずは「55g/L」を基準にする
計量が面倒で、味が安定しない…という悩みは多いです。ここは一度だけ“基準”を作ると急に楽になります。
目安として、SCA(Specialty Coffee Association)の基準では、テストの標準比率として「水1リットルに対してコーヒー55g(約55g/L)」が使われています。家庭でも、ここを起点に濃い・薄いを調整するとブレが減ります。
| 作りたい量 | 豆の量(目安) | 水の量 |
|---|---|---|
| 1杯(250ml) | 約14g | 250g |
| 2杯(500ml) | 約28g | 500g |
| 4杯(1,000ml) | 約55g | 1,000g |
※「ml」と「g」を混ぜていますが、水は1ml≒1gとして扱うと家庭では十分です。
※比率(55g/L)を再現しやすくする(計量の手間を減らす)
4. 湯温:迷ったら92〜96℃を外さない
湯温は、酸味・苦味・香りの出方に関わります。SCAの家庭用抽出器具の要件では、粉に触れる温度が概ね92〜96℃の範囲に入ることが求められています。ケトルを沸かして少し落ち着かせる(30〜60秒)だけでも近づきます。
5. 水:味が“薄い/苦い”の原因が実は水のこともある
水は地味ですが、味の差が出ます。SCAの水質指標では、TDS(総溶解固形物)やアルカリ度などに推奨レンジが示されています。特に、塩素臭があると香りが損なわれるので、浄水器や一度汲み置きするだけでも改善することがあります。
まずは「ドリップで1つだけ変える」練習が最短ルート
こだわりが育たない最大の理由は、変数を一気に増やしてしまうことです。豆も器具も湯温も変えると、何が効いたのか分からなくなります。
おすすめは、次の順番です。
- 豆の種類(焙煎度)だけ変える
- 豆は固定して、比率だけ変える(55g/L→60g/Lなど)
- 比率は固定して、挽き目を微調整する
- 湯温を変える
- 最後に器具を変える
V60で「自分好み」を探すための、シンプルな基本レシピ
V60は“注ぐ速さ”で味を変えやすく、好み作りに向いています。形状(円すい形・大きなひとつ穴・スパイラルリブ)により、注湯のしかたで抽出が変わるのが特徴です。
※V60で練習を始めやすくする(器具の迷いを減らす)
HARIO(ハリオ)V60セラミックドリッパー02セット(サーバー付き)
ドリッパーとサーバーがセットになっているため、V60の基本レシピで練習を始めやすい構成です。器具を固定しておくと、豆・比率・挽き目の違いが比較しやすくなり、「自分好み」を見つける手順がシンプルになります。
基本レシピ(1〜2杯)
- 豆:15g(中挽き〜中細挽き)
- 湯:250g(92〜96℃)
- 蒸らし:30秒
- 抽出の目安:2分30秒〜3分30秒
ペーパーは事前にリンス(湯通し)すると、紙の匂いを抑えつつ器具も温まります。メーカー解説でも、リンスの目的として「容器を温める」「紙に成分をしみこませない」点が挙げられています。
味がズレたときの調整表
| 困りごと | よくある原因 | 最初に試す調整 |
|---|---|---|
| 薄い・水っぽい | 比率が薄い/挽き目が粗い | 豆を+1〜2g、または挽き目を少し細かく |
| 苦い・重い | 挽き目が細かい/湯温が高い/注ぐのが遅い | 挽き目を少し粗く、または注湯を少し速く |
| 酸っぱく感じる | 抽出不足(湯温低め/挽き目粗め) | 湯温を上げる、または挽き目を少し細かく |
「こだわり」を言語化するミニ質問集
最後に、回答をそのままプロフィールやSNS、会話に使える“言語化テンプレ”を置いておきます。
- 甘み/酸味/苦味のどれが好きですか?
- 軽い口当たりと、重い口当たり、どちらが好みですか?
- 香りは「フルーツ系」「ナッツ系」「チョコ系」どれに惹かれますか?
- 朝に飲みたいのは、目が覚める系?リラックス系?
- ミルクを入れるなら、深煎り寄りが合いやすいと感じますか?
この5つに答えるだけで、「自分は何を大事にしているか」が見えてきます。そこから豆選びや器具選びが、趣味として気持ちよく回り始めるはずです。
参考:コーヒーの“挽きたての香り”に惹かれる人は多い
「挽きたての香りが好き」というのは、こだわりとしてとても伝わりやすい言葉です。たとえば企業アカウントでも、挽きたて・香りを推す投稿はよく見られます。
参考文献・根拠にした情報
- SCA: Certified Home Brewer Program Minimum Certification Requirements(55g/L、温度、抽出指標の記載)
- HARIO公式:V60の構造(円すい形・大きなひとつ穴・スパイラルリブ)
- メーカー直伝:ハリオV60 ハンドドリップの淹れ方(リンスや抽出時間の目安)
- SCAの水質指標の解説(TDS、アルカリ度など)
まとめ:こだわりは「基準を作って、1つずつ試す」と自然に育つ
こだわりを作る近道は、いきなり道具沼に入ることではありません。比率(55g/L)と湯温(92〜96℃)を基準にして、豆→比率→挽き目の順で1つずつ変える。これだけで、味の違いが分かるようになり、言語化もできるようになります。
「あなたのこだわりは?」と聞かれたとき、今日の一杯から答えが作れます。気負わず、まずは“基準の一杯”を作るところから始めてみてください。


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